THIRD ARCHITECTURAL MAQUETTE FOR “THE GATES OF HELL” 「地獄の門」のマケット(第三構想)

《「地獄の門」のマケット(第三構想)》は、新設の装飾美術館に設置する門の制作をフランス政府から依頼された1880年、二番目のマケットに続いてすぐに制作されました。最初のマケットは全体を10枚のパネルで規則的に分割し、それぞれのパネルに独立した物語を展開させるものでしたが、二番目のマケットではパネル形式をやめて、3つに分けた各部分に多くの人物像を配していこうとする過程が認められます。そして最後のマケットである第三構想で、左右2枚の扉と上部ティンパヌムという3つの部分を基本的な構成要素とすることがはっきりと示されました。さらにその外側には、扉左右の柱形、ティンパヌムの上部の張り出しがあり、こうした構成は現在われわれが目にする《地獄の門》の位置関係と一致します。

多くの人物が不明瞭に表されたマケットですが、ティンパヌム中央には「考える人」が配置されているのがわかります。後に独立した作品ともなる「考える人」は、このマケットにおいて初めて登場し、最終型までそのまま残されました。左扉には抱き合うふたりの像「パオロとフランチェスカ」が認められますが、この人物たちのポーズは後に《接吻》へと展開するもので、《地獄の門》の「パオロとフランチェスカ」としては後に別の二人像がつくりだされます。右扉には息子を膝に乗せて座る「ウゴリーノ」が見られます。これも最終的にはポーズが変えられ、左扉に移されます。

石膏によるマケット(第三構想)は国立西洋美術館のほか、ロダン美術館(パリ)、フィラデルフィア美術館、ハーシュホーン美術館・彫刻庭園(ワシントンD.C.)に収蔵されています。国立西洋美術館の作品には、本作を購入した松方幸次郎への献辞が刻まれていますが、これはロダンによるものではなく購入時のロダン美術館によるものです。フィラデルフィア、ワシントンD.C.所蔵のマケットには、それぞれ購入したジュール・マストボウム、エドモン・デイヴィスヘの献辞が刻まれています。

(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)

制作年

1881-82年頃(原型)

材質・技法・形状

石膏着彩

寸法(cm)

115 x 62 x 19

署名・年記

右下に署名: Rodin; 献辞: a. m. Kojiro Matsukata / en hommage / du Musée Rodin

所蔵経緯

松方コレクション

Standard ref.

M1294

分類

彫刻

所蔵番号

S.1959-0046

来歴

松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.

※このサイトでご覧いただけるすべての3Dモデルは、山田修氏により計測・作成されたものです。