THE CROUCHING WOMAN うずくまる女

《うずくまる女》となんの逸話的な意味をもたない題名のこの女性像は、《地獄の門》のための人体像として、 32センチメートルのオリジナル・サイズで1881-82年に制作されました。同時期に制作された《アダム》や《エヴァ》と同様、ポーズや身体表現のうえでミケランジェロの人体像との関連が指摘されています。人間の動きとしてはきわめて不自然なポーズをしていますが、人体像としては全体が美しくまとめられています。膝を固く折って腰を下ろした上に、右肩を大きく下げた身体が強いねじれを形づくっています。顔は正面から見ると横向きになるような位置で右膝に載せられています。台座の大きさや角度の異なったいくつかのヴァージョンがあり、国立西洋美術館所蔵作では傾斜がつけられ、身体とのバランスを保っています。モデルはロダンお気に入りのイタリア女性アデル・アブルッツェージとされています。

ロダンは複製が可能なブロンズ鋳造の技術を利用して、同じ型から生みだされた形を繰り返し使用しますが、「うずくまる女」はとくにロダンが好んだ人体像のひとつです。《地獄の門》のなかには、一度は右柱の上部、「堕ちる男」と組み合わされ 「私は美しい」の二人像のひとりとして表され、もう一度は、「考える人」の右側、「殉教の女」を変形させた人体像との組み合わせで配置されています。また《地獄の門》から離れ、いくつもの単独のアサンブラージュ作品に利用されました。 国立西洋美術館所蔵作は1900年以降、職人のルボセにより拡大されたもので、アレクシス・リュディエ鋳造所によるロダンの没後鋳造です。

(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)

制作年

1882年頃(1906-08年頃に拡大)

材質・技法・形状

ブロンズ

寸法(cm)

96 x 68 x 55

署名・年記

台座左側面に署名: A. Rodin; 台座背面に鋳造銘: Alexis Rudier / Fondeur Paris

所蔵経緯

松方コレクション

Standard ref.

M1268

分類

彫刻

所蔵番号

S.1959-0020

来歴

松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.

※このサイトでご覧いただけるすべての3Dモデルは、山田修氏により計測・作成されたものです。