THE AGE OF BRONZE 青銅時代
《青銅時代》はロダンが初めてのイタリア旅行から戻ってすぐに制作された作品で、彼の主要作品としては最初のものです。イタリアで目にしたミケランジェロの作品をはじめとするルネサンスの彫刻や絵画に触発され、その成果を表現したものです。モデルとなったのは22歳の兵士オーギュスト・ネイでした。この作品は、1877年1月にブリュッセルの展覧会で発表されるとすぐに高い評価を受ける一方で、スキャンダルに見舞われました。左足を軸足として軽く腰をひねるポーズは、古代以来用いられてきた伝統的なものでした。伝統の形式に従いつつ、憂いを帯びた表情を見せた完成度の高い作品に仕上げられた本作でしたが、そのあまりの写実性と主題の曖昧さにより、批評家たちから生きたモデルから直に型取りしたものと勝手に判断され、批判を受けたのでした。この批評はパリにも届き、同年のサロン展に応募した際、本作は同じ理由で批判を受けました。まったく謂れのない批判に対し、ロダンはモデルに同じポーズをさせた写真を提示し反論を試みています。この作品が真価を認められ、国家の買い上げとなったのはそれから3年後でした。
本作は1870年の普仏戦争を想起させる「敗北者」と題されたこともありましたが、ロダンは後になってこの作品に人間存在の起源を示す《青銅時代》という題名をつけ、普遍性を与えました。ブールデルは後に、本作の真の主題を、「これは誕生したいと願い、明日のロダンに立ち向かう、昨日のロダンである」とし、この作品に彫刻家ロダンの姿を重ね合わせている。さらに「この作品はブロンズの鋳造であり、それは青銅より硬い。それこそがロダン自身の魂なのだ」と記している1)。
1)Antoine Bourdelle,"Rodin et la Sculpture," Antoine Bourdelle, La Sculpture et Rodin, Paris: Artes, Éditions d'Art, 1978, p.137.
(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)
制作年
1877年(原型)
材質・技法・形状
ブロンズ
寸法(cm)
181 x 70 x 66
署名・年記
台座上面右に署名: Rodin; 台座背面右下に鋳造銘: .Alexis Rudier. / .Fondeur. PARIS.
所蔵経緯
松方コレクション
Standard ref.
M1250
分類
彫刻
所蔵番号
S.1959-0002
来歴
松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.
※このサイトでご覧いただけるすべての3Dモデルは、山田修氏により計測・作成されたものです。
