POPE BENEDICT XV 教皇ベネディクトゥス15世
ロダンにとって、1875-76年の最初の訪問以来、イタリアは古代やルネサンス、バロック彫刻の、そして美しい肌と肉体をもつ人々の地として特別な場所であり、晩年にいたるまで繰り返し訪れています。そして1915年には、バチカンで教皇に就任したばかりのベネディクトゥス15世(1854-1922/在位1914-22)の肖像を制作する機会を得ました。ベネディクトゥス15世は第一次世界大戦期の教皇として、和平に尽力した人物です。忙しい公務を抱えながらも、当初は必要なだけ何度でもモデルを務めるとしていた教皇でしたが、実際にモデルとなったのは3回だけであったことに、ロダンは大いに不満でした。しかもその間、教皇はじっと座っていることがないばかりか、正面からの姿しか見せようとしなかったと、ロダンは制作の苦労を語っています1)。結局、ローマで作品は完成しませんでしたが、当時ローマのフランス・アカデミーの館長であった画家アルベール・ベナールは未完の本作を見て賛辞を贈っています。作品はパリに戻ってから、取り寄せた写真をもとに完成されました。
簡素な帽子を被った頭部像となった本作は、歴代の教皇たちの絵画や彫刻が示すような威厳のある堂々としたものではなく、人間的で、むしろ親しみやすさを感じさせるものとなりました。しかしそれは教皇側が望むものではなく、本作のブロンズ像がバチカンに収められたのは1971年のことでした2)。
1) Antoinette Le Normand-Romain, The Bronzes of Rodin, Catalogue of Works in the Musée Rodin, (Rodin et le Bronze, Catalogue des Œuvres Conservées au Musée Rodin), vol.1, Paris: Éditions de la Réunion des Musées Nationaux, Musée Rodin, 2007, p.203.
2) Albert E. Elsen et al., Rodin's Art, New York: Oxford University Press, 2003, p.491.
(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)
制作年
1915年
材質・技法・形状
ブロンズ
寸法(cm)
23 x 19 x 26
署名・年記
頸部右に署名: A. Rodin; 台座背面右に鋳造銘: ALEXIS RUDIER. / FONDEUR PARIS
所蔵経緯
松方コレクション
Standard ref.
M1255
分類
彫刻
所蔵番号
S.1959-0007
来歴
松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.
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