OCEANIDES オケアノスの娘たち

ギリシャ神話では、オケアノスは大地の周囲をめぐる大洋を司る水の神として登場します。そして地上のすべての河川や泉はこの大洋、つまりオケアノスが生みだすものとされました。オケアノスと妻テテュスとの間には3,000人の娘がおり、《オケアノスの娘たち》という題名からは、ここに登場する3人がこの娘たちに属するものであることが想像されます。

本作は1903-06年にマテによって彫られた大理石をもとに鋳造されました。この大理石の作品には《アドニスの死》(パリ、ロダン美術館所蔵)という題名がつけられています。アドニスもギリシャ神話の登場人物で、アフロディテをも魅了した美少年でしたが狩猟中に猪に突かれ死にいたり、このときに流れた彼の血からアネモネの花が生まれたとされています。さらにロダンの没後、作品がフランス政府に寄贈されたとき、この大理石像は《春》という題名でした。人物たちの周囲に見られる装飾的な草花からは、アドニスや春のほうがこの作品に適しているように思われます。跪いて向かい合うふたりの女性は明らかに《抱きあうバッカントたち》と同型であり、本作はそれに人物がひとり追加されたアサンブラージュです。

ロダンの作品のうちでも装飾性の高いこのブロンス像は、松方幸次郎が最初の発注者のひとりとなりました。

(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)

制作年

1906年

材質・技法・形状

ブロンズ

寸法(cm)

53 x 84 x 55

署名・年記

台座右下に署名: A. Rodin; 台座背面右下に鋳造銘: ALEXIS. RUDIER. / FONDEUR. PARIS.

所蔵経緯

松方コレクション

Standard ref.

M1284

分類

彫刻

所蔵番号

S.1959-0036

来歴

松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.

※このサイトでご覧いただけるすべての3Dモデルは、山田修氏により計測・作成されたものです。