MONUMENT TO GENERAL LYNCH (MAQUETTE) リンチ将軍記念碑(マケット)
本作のモデル、リンチ将軍はチリ人のパトリシオ・リンチ・ソロ・ デ・ザルディヴァール(1824-1886)で、1879-83年にかけてのチリ=ペルー戦争で活躍した将軍でした。1886年、ロダンにこの記念碑を注文したのは、チリ大使カルロス・モーラ=ヴィキュンニャ(1846-1900)です。ロダンはこの注文に先立ってモーラ=ヴィキュンニャ夫人の肖像を制作していました。しかし結局、本作はマケットを制作したところで終わり、それを完成させ、チリに設置するにはいたりませんでした。
ロダンは本作で、伝統的な形式の馬上の人物像を試みています。後ろ足に体重をかけた馬は前に飛び出そうと躍動し、その上でリンチ将軍は姿勢を伸ばし、まっすぐに前に腕を掲げながら軍隊を先導する威厳を示しています。ロダンは本作を制作するにあたり、ドナテッロによる《ガッタメラータ》(パドヴァ)やヴェロッキオによる《コッレオーニ》(ヴェネツィア)などを念頭に置いていたでしょう。1875-76年に行ったイタリア旅行中にはさまざまな動きの馬も多数描いており、こうした蓄積が本作につながったといえます。
チリに設置することを想定し、将軍の名前を刻んだ高い台座もデザインしていましたが、これは発注者のモーラ=ヴィキュンニャの意に沿わなかったようです。また発注が止められた後、高い円柱の上に本作を設置する構想も立てており、その石膏像がロダン美術館に残っています。ロダンの生前では、1899年と1900年にペルジンカ鋳造所でブロンズ鋳造されています。国立西洋美術館所蔵作は1921年、アレクシス・リュディエ鋳造所による鋳造です。
(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)
制作年
1886年
材質・技法・形状
ブロンズ
寸法(cm)
41 x 35 x 17
署名・年記
台座前面に署名: A. Rodin; 台座右側面に鋳造銘: ALEXIS RUDIER / Fondeur PARIS
所蔵経緯
松方コレクション
Standard ref.
M1280
分類
彫刻
所蔵番号
S.1959-0032
来歴
松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.
※このサイトでご覧いただけるすべての3Dモデルは、山田修氏により計測・作成されたものです。
