MEDITATION 瞑想

現在《瞑想》と呼ばれるロダンの等身大の女性像は、《地獄の門》のティンパヌムの右端で罰を受ける小さな女性像がもとになっています。その後の《瞑想》と比較すると腕の位置が異なってはいますが、左膝を曲げて激しく身を捩ったポーズに大きな変更は見られません。《星座》にも見られるように、この女性像はアサンブラージュの一部としてしばしば用いられました。その最も重要な作例が、パンテオンに設置するものとしてロダンに制作が依頼された《ヴィクトル・ユゴー記念碑》です。ユゴーの後ろで、ユゴーの詩集(1837年刊行)の題名からとられた「内心の声」として登場するこの像は、この記念碑が完成に向かって構成を変化させていくのにともない、少しずつ形を変えていきました。この変化の過程で生まれた女性像は記念碑を離れ、単独像として独立した作品となります。そしてそれと同時に、ユゴーの詩との直接的な関係を示す「内心の声」という題名は《瞑想》に変えられました。国立西洋美術館所蔵の《瞑想》は、太い腕の動きに合わせ大きく傾けた上体を、どっしりとした下半身が支えます。片足を折り曲げ体重をもう一方の足にかけることで、足から腰の曲線が美しく表されます。この体を大きくひねった、力強いポーズにはミケランジェロの人体表現の影響も指摘されます。この後《瞑想》は両腕と膝から下の足が削り落とされ、あえて完成の状態から形を変えられました。また鋳造の過程で生じる型の跡を意図的に残し、表面を滑らかに仕上げることを避けています。一般的な身体像に必要と思われるものをあえて欠落させ、表面を荒らすロダンの手法です。

国立西洋美術館所蔵作は両腕と両足のある《瞑想》としては、唯一アレクシス・リュディエ鋳造所で鋳造されたもので、ロダン没後の最も早い鋳造です。

(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)

制作年

1900年以後

材質・技法・形状

ブロンズ

寸法(cm)

155 x 72 x 65

署名・年記

台座上面左に署名: A. Rodin; 台座背面に鋳造銘: ALEXIS. RUDIER. / Fondeur. PARIS; 左側面に鋳造番号: M-R-no-1

所蔵経緯

松方コレクション

Standard ref.

M1281

分類

彫刻

所蔵番号

S.1959-0033

来歴

松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.

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