HEAD OF THE FUNERARY SPIRIT 墓をまもる精霊の頭部
1898年に画家のピュヴィ・ド・シャヴァンヌが死去すると、この偉大な画家を称えるために記念碑の設立が計画され、この制作がロダンに依頼されることとなりました。ロダンは敬愛するこの画家への記念碑として、1890年に制作したピュヴィの頭部を用い、そこに「永遠なる休息の精」を租み合わせた記念碑を構想しました。台座に載ったピュヴィの頭部像を簡素なテーブルの上に設置し、精霊と1本の木が優しくテーブルにもたれかかるという構成は、神像のまわりで戯れる精霊や牧童といった古代の楽園を想起させます。これは、ピュヴィ・ド・シャヴァンヌが描いた絵画の古代性への賛辞とも受けとることができるでしょう。本作はこの記念碑のために制作された「永遠なる休息の精」のための頭部です。小さな頭部像であり、表面には完全な仕上げがなされず、粘土の塊や削った跡が顕著に残されています。それらがかえってこの作品に、表情や動きを与えています。
ピュヴィ・ド・シャヴァンヌのための記念碑を大理石で制作することも考えていたロダンでしたが、結局この記念碑は完成にいたらず、石膏像がロダン美術館に残るだけです。《ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ記念碑》としては1924年、ジュール・デボワ(1851-1935)によって制作された別の作品が設置されました。
(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)
制作年
1898年頃
材質・技法・形状
ブロンズ
寸法(cm)
14.5 x 13 x 13
署名・年記
頸部左に署名: A. Rodin; 頸部背面に鋳造銘: Alexis RUDIER / Fondeur. PARIS
所蔵経緯
松方コレクション
Standard ref.
M1271
分類
彫刻
所蔵番号
S.1959-0023
来歴
松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.
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