FALLEN CARYATID CARRYING HER STONE 石を負うカリアティード
カリアティードは「人像柱」と訳されるとおり、古代ギリシャ建築の一部で破風につながる横通しの部材を支える人の形をした柱です。構造部材でありながら装飾性の高いもので、アテネのアクロポリスの丘にあるエレクテイオンの6体のカリアティードを配した建築が有名です。古代のカリアティードは通常、無表情で直立する女性の姿で表され、頭上に重荷を負っていることが彫刻表現に関連づけられることはありません。それにたいして、ロダンがカリアティードと名づけた本作は、左肩に載せた石の重みを全身で受け、苦しげな表情です。本作はカリアティードと題されたものの、建築の一部として制作されたものではなく、《地獄の門》でも左柱の最上部、装飾の陰に隠れるような位置に置かれています。本作は、当初「疲れた女性たち」の一部として、あるいは「悲しみ」という題名で発表されています。人の心理状態を抽象的に表す題名から《石を負うカリアティード》となったことで、作品には新たな意味が与えられました。ここで女性が必死に耐えて支えている石は、人問が抱える運命の重さに重ねられ、当時の批評家たちの関心を集めました。石のほか、壺を担うカリアティードも制作され、いずれも後に拡大されました。国立西洋美術館所蔵作はオリジナル・サイズです。
(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)
制作年
1881-82年頃
材質・技法・形状
ブロンズ
寸法(cm)
44 x 32 x 30
署名・年記
台座背面に署名: A. Rodin; 台座背面右下に鋳造銘: Alexis. Rudier / Fondeur. Paris
所蔵経緯
松方コレクション
Standard ref.
M1258
分類
彫刻
所蔵番号
S.1959-0010
来歴
松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.
※このサイトでご覧いただけるすべての3Dモデルは、山田修氏により計測・作成されたものです。
