BUST OF PUVIS DE CHAVANNES ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの胸像
1890年、ロダンはフランス政府からアミアンのピカルディ美術館に設置するものとして、画家ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824-1898)の大理石像を制作するよう依頼を受けます。ピュヴィス・ド・シャヴァンヌはサロンで活躍する一方、1860年代以降アミアンの美術館やパンテオン、リヨン美術館などの公共建築の装飾やフレスコ画を手がけ、その均衡のとれた構図や静謐な作風から多くの支持を得ていました。ロダンとの交友は深く、1889年にはともに国民美術協会の設立メンバーとなり、新時代のサロン展創設に向けて中心的な役割を果たしました。ロダンはピュヴィス・ド・シャヴァンヌについて、「わたしは彼の平穏さ、生命に向かい合う瞑想的な静けさを愛しています」1)と語り、この年長の画家への尊敬の念を表しています。
政府からの大理石像制作の依頼にたいして、ロダンはまず石膏で頭部像を制作しました。ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの顔は穏やかな思慮深い表情に仕上げられましたが、記念像にふさわしく胸像で制作することを求められ、あらためて身体を反らせた堂々とした胸像として制作されました。ピュヴィス・ド・シャヴァンヌは、「あなたが制作したわたしの頭部を気に入っています」2)と手紙に書きながらも、この像にフロックコートとネクタイ、さらにはレジオン・ドヌール勲章を明らかにわかるように加えてほしいと要望しています。この石膏像を原型にして大理石像が制作され、 1894年にアミアンに設置されました。1898年のピュヴィス・ド・シャヴァンヌの死に際し、ロダンに記念碑の制作がもちかけられ、このときの頭部像を利用して「永遠なる休息の精」と木の枝を組み合わせた作品が考案されましたが(《墓をまもる精霊の頭部》 の解説参照)、結局は記念碑として設立されることはありませんでした。
1)Gustave Coquiot, Rodin à l'Hôtel de Biron et à Meudon, Paris: Librairie Ollendorff, 1917, p.37. John L. Tancock, The Sculpture of Auguste Rodin, Philadelphia: Philadelphia Museum of Art. 1976, pp.521-522, 525.
2)Letter from Pierre Puvis de Chavannes to Rodin, Rodin en 1900, L'Exposition de l'Alma, exh. cat., Paris: Musée du Luxembourg, 2001, p.172.
(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)
制作年
1890-91年
材質・技法・形状
ブロンズ
寸法(cm)
51 x 50 x 32
署名・年記
左腕に署名: A. Rodin; 背面右下に鋳造銘: ALEXIS. RUDIER. / FONDEUR. PARIS
所蔵経緯
松方コレクション
Standard ref.
M1295
分類
彫刻
所蔵番号
S.1959-0047
来歴
松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.
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