BUST OF GUSTAVE GEFFROY ギュスターヴ・ジェフロワの胸像

ジェフロワがロダンについての批評を初めて発表したのは1883年でした。このとき彼は大理石の《石の時代》(後に《石を負うカリアティード》と題される)について「彼〔ロダン〕の進むべき道が明確になり、このような芸術が真に正当なものだと断言できるまで待とうではないか」1)と書き、自身はまだ完全にこの彫刻家を評価していないことを明かしています。それから6年後の1889年、パリの画廊で開催されたモネとの二人展のカタログでは、ジェフロワはロダンに賛辞を贈るとともに、各作品を的確に記述しました。以後、批評家としてジェフロワは常にロダンを擁護し、ふたりの信頼関係はロダンが亡くなるまで続きます。
ジェフロワの肖像が制作される前年、ロダンの《考える人》 をパリの民衆のシンボルとして市内の公共の場所に設置することを求める運動が起こりました。そして一般からの募金により、同作は1906年にパンテオンの前に設置されています。このとき中心的役割を果たしたジェフロワにたいして、長年の批評活動を含む彼の貢献への感謝の気持ちを表すものとして肖像が制作され、贈られました。ジェフロワはこの「完璧な作品」2)に感激し、ロダンに礼状を書き送っています。このときジェフロワは、ロダンのユゴー、ダルー、ロシュフォールの胸像にたいして彼自身が評した言葉を、今度は自分の肖像に向けたことでしょう。「同時代の人々の胸像において、ロダンは外観の真実を伝えることに秀でているだけでなく、モデルたちの個性までをも見事に引き出している。(中略)熱心な観察により肖像は外見が似るだけでなく、魂が吹き込まれるのだ」3)。
ジェフロワに関しては頭部像と胸像があり、胸像である国立西洋美術館所蔵作は、ロダン没後のアレクシス・リュディエ鋳造所による鋳造で、現在所蔵先のわかる唯一のブロンズ像です。

1)Gustave Geffroy, "Chronique," La Justice, 3 March, 1883.
2)Rodin et les Écrivains de Son Temps, exh. cat., Paris: Musée Rodin, 1976, p.73.
3)Claude Monet A. Rodin, exh. cat., Paris: Galerie Georges Petit, 1889, p.73, facsimile, Claude Monet-Auguste Rodin, Centenaire de l'Exposition de 1889, exh. cat., Paris: Musée Rodin, 1989, p.65.

(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)

制作年

1905年(?)

材質・技法・形状

ブロンズ

寸法(cm)

45 x 45 x 26

署名・年記

左肩下に署名: A. Rodin; 背面中央下に鋳造銘: ALEXIS RUDIER / Fondeur PARIS

所蔵経緯

松方コレクション

Standard ref.

M1272

分類

彫刻

所蔵番号

S.1959-0024

来歴

松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.

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