BUST OF FATHER EYMARD エイマール神父の胸像

1862年、ロダンにとって最も身近な理解者であった姉マリア (1838-1862)が世を去りました。姉の死に深い失望を味わったロダンは、修道女であった姉の後を追い、自らも修道士となるために聖体礼拝会修道院に入ります。ピエール=ジュリアン・エイマール(1811-1868)は、数年前に設立されたばかりのこの修道院の神父でした。しかしエイマール神父はまもなく、ロダンに修道士としてよりも彫刻家としての才能を見いだし、彼に自分の胸像制作を許可しました。これがロダンにとっては契機となり、再び彫刻家としての道を歩むため、修道院を後にしたのです。

本作は、ロダン自身の若々しいエネルギーを感じさせる作品で、前に突き出た額が高い鼻筋につながる鋭い顔つきや動きのある髪型など、明快な形に仕上げられています。さらには首まで包む聖職衣や胸に持っている巻物などが、作品に装飾的な効果をもたらしています。しかし本作をめぐっては、エイマール神父側が制作費の支払いを拒んだことから、作品の取り扱いがこじれ、結局、晩年にロダン美術館の設立が決まってから、ようやくブロンズに鋳造されました。

(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)

制作年

1863年(原型)

材質・技法・形状

ブロンズ

寸法(cm)

60 x 28 x 29

署名・年記

右側面下に署名: A. Rodin; 背面左下に鋳造銘: Alexis RUDIER / Fondeur PARIS.

所蔵経緯

松方コレクション

Standard ref.

M1289

分類

彫刻

所蔵番号

S.1959-0041

来歴

松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.

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