BUST OF ÉTIENNE CLÉMENTEL エティエンヌ・クレマンテルの胸像
代議士エティエンヌ・クレマンテル(1864-1936)は、第三共和政においてたびたび大臣に就任し力を発揮する一方で、芸術の良き理解者でもありました。モネやブールデル、鋳造家のリュディエとも親しくしていたクレマンテルは、ロダンにも高い関心をもち、ロダンの最晩年に仲間からわき上がった個人美術館の設立運動にも強力に貢献しています。そんなクレマンテルにとって、本作の実現はまさに念願叶ったものといえるでしょう。クレマンテルは、1916年、仕事の昼休み時間を利用して100回以上、胸像のためにポーズをとったと語っています1)。本作はロダンによる胸像としては最後のもので、ふたつのヴァージョンがあります。しかし気力も体力も衰えかけていたロダンは、どちらも最後まで仕上げることができませんでした。国立西洋美術館所蔵作は最初に手がけられたほうの作品で、肩の幅が広くとられ、とくに額から目にかけての部分に粗いタッチがより多く見られます。こうしたタッチのひとつひとつに、ロダンの面の構成のプロセスを見ることができるでしょう。ピンと張った口鬚はクレマンテルの特徴をよく表しています。クレマンテルは、ロダンの最後の作品である本作を普及させることを希望し、この像を次々と鋳造させました。
1) Hare, p.636.
(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)
制作年
1916年
材質・技法・形状
ブロンズ
寸法(cm)
57 x 58 x 28
署名・年記
左肩に署名: A. Rodin; 背面左下に鋳造銘: Alexis Rudier / Fondeur PARIS.
所蔵経緯
松方コレクション
Standard ref.
M1259
分類
彫刻
所蔵番号
S.1959-0011
来歴
松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.
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