BELLONA ベローナ

本作は、1879年、普仏戦争時(1870年)のパリ防衛を称えるために、パリ市が計画した記念碑のコンペティションに、ロダンが応募した作品です。まだ公的な受注のない若い彫刻家にとって、このようなコンペティションでの注文の獲得は、名前を売り出す絶好の機会でした。この作品のためのモデルには、恋人のローズが協力しています。装飾的な武具に身を包んだ女性は、眉をしかめ、鋭い目つきで右方を睨みつけており、横一文字に結んだ唇には、強い意志が感じられます。フランソワ・リュード(1784-1855)による勝利の女神(1835-36年、パリ、凱旋門)を想起させる本作は、コンペティションの趣旨に沿うものと思われましたが、このコンペティションでは、本作を含む応募されたすべての作品が落選しました。それでも、ロダンの周囲にいた批評家、彫刻家たちはこぞってこの作品を称賛しました。1889年にジョルジュ・プティ画廊で展示されると、すぐに大理石による注文が入り、本作は人気を博すこととなりました。

作品は、「クロリンダ」(16世紀の叙事詩『解放されたエルサレム』に登場する女性戦士)、「ヒッポリュテ」(ギリシャ神話に出てくるアマゾネスの女王)あるいは共和国を表す「ラ・フランス」、そして「ベローナ」といくつかの名前で呼ばれています。ベローナは古代ローマの戦争の女神です。

国立西洋美術館所蔵のブロンズ像はアレクシス・リュディエ鋳造所による鋳造ですが、黒い兜や武具に身を包んだ女性の顔や胸元は緑色のパティナで色づけされており、ブロンズにおける色彩表現を見ることができます。

(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)

制作年

1879年

材質・技法・形状

ブロンズ

寸法(cm)

83 x 52 x 41

署名・年記

右肩下に署名: A. Rodin; 背面下に鋳造銘: ALEXIS RUDIER. / FONDEUR PARIS

所蔵経緯

松方コレクション

Standard ref.

M1254

分類

彫刻

所蔵番号

S.1959-0006

来歴

松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.

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