AESCULAPIUS 勧告

《勧告》はふたりの人物が奇妙に組み合わされた作品で、その題名とともに意味するところは不明です。とくにばらばらに伸ばされたふたりの両腕が全体の構成を不安定なものに見せています。《星座》は、ロダンがしばしば用いた、正面向きに合わせられたふたりの人物の構成で、この構成により背中や腰の輪郭がより強調されています。本作では下になっている女性の身体は、《瞑想》と一致します。

両作品はともにロダンの生前には石膏のまま残され、展覧会に出品されたこともありませんでした。松方のために鋳造が決まり、アレクシス・リュディエ鋳造所で初めて鋳造されたのです。ロダンの没後、美術館の館長であったベネディットは、生前にブロンズ鋳造されることがなかった作品を、数を制限しながらも積極的に鋳造する措置をとっており、両作品ともそれに含まれます。題名の《勧告》《星座》もロダンがつけたものであるのかどうか不明です。国立西洋美術館では《勧告》をこれまで《エスクレピオス》と題してきました。日本に寄贈、返還されたときの作品リストでは、「《エスクレピオス》別名《勧告》」とされていましたが、《エスクレピオス》と《勧告》は別の作品であり、ロダン美術館の分類では本作は《勧告》とされています。《エスクレピオス》は現在国立西洋美術館には所蔵されていませんが、これに関して松方のために最初の鋳造がされた可能性も指摘されています1)。こうした経緯から、《エスクレピオス》と《勧告》は寄贈、返還の際に混同されたとも考えられます。

1) Le Normand-Romain, 2007, vol.1, p.325.

(大屋美那監修/編集『手の痕跡 : 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描』 展覧会図録、東京:国立西洋美術館、2012年)

材質・技法・形状

ブロンズ

寸法(cm)

40 x 40 x 22

署名・年記

台座正面に署名: A. Rodin; 台座背面左下に鋳造銘、鋳造番号: ALEXIS RUDIER. / FONDEUR. PARIS. / MR / No1

所蔵経緯

松方コレクション

Standard ref.

M1265

分類

彫刻

所蔵番号

S.1959-0017

来歴

松方幸次郎氏購入; 1944年フランス政府が接収; 1959年フランス政府より寄贈返還.

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